スターリン礼賛…露大統領府が阻止へ圧力
モスクワで開かれたメーデー集会で、スターリンの肖像画を掲げる共産党支持者(1日)=ロイター
【モスクワ=山口香子】第2次大戦の独ソ戦戦勝65周年を祝う9日の式典に合わせて、ロシア各地で旧ソ連の独裁者スターリンのポスターなどを公共の場に掲示する動きが相次いでいる。
ロシア第2の都市サンクトペテルブルクでは5日、巨大なスターリンの顔が車体にペイントされた路線バスが登場した。モスクワ市も2月、幹線道路沿いなどにスターリンのポスター10枚を展示する計画を発表。極東ウラジオストクではポスター掲示が始まった。
こうした動きに、露大統領府は反対する姿勢を明確にしている。大統領直属の戦勝記念式典実行委員会はモスクワ市の計画に待ったをかけた。同市は4月末、「クレムリンの圧力により」(ベドモスチ紙)計画の撤回に追い込まれた。
ロシアでは、原油価格の高騰で経済が好調だった2008年末ごろまで、国営テレビで「スターリン礼賛」が横行するなど、ソ連を大国に導いた「偉大な指導者」としてスターリンを再評価しようとする当局の意向が明らかだった。
だが、メドベージェフ大統領は09年10月、スターリンの「犯罪」について「いかなる理由でも正当化されない」と発言。プーチン首相も今年4月、「全体主義の残虐行為への評価は覆しえない」と述べるなど、軌道修正している。
政治学者アレクセイ・マカルキン氏は、08年の金融危機を境に、政権は経済を近代化する必要を痛感したと指摘。そのために利用できる欧米との関係を悪くしないため、政権は「スターリン復活」による対外イメージの悪化を避けようとしていると話す。
(2010年5月8日18時31分 読売新聞)