竹島

しもじょう まさお
1950年、長野県生まれ。国学院大学大学院博士課程修了。83年に韓国に渡り、三星綜合研修院主任講師、市立仁川大学校客員教授を歴任。99年に拓殖大国際開発研究所教授、2000年に現職の同大国際開発学部アジア太平洋学科教授に就任する。著書に「竹島は日韓どちらのものか」(文春新書)など。専攻は日本史。
 ―竹島問題研究会の役割は。
 「竹島(韓国名・独島)の領有権問題を解決するためには、日韓両国がそれぞれの主張や立場の学術的な根拠を示し、対話の窓口をつくらなければならない。ところが、日本の場合、政府はその役目を担ってこなかった。このため、『竹島の日』条例を制定した島根県が昨年、研究会を設置し、その委員に選ばれた私たちが県の支援、協力を得ながら、代役を果たすことになった」

 ―研究の現況、進ちょくは。
 「日本側の研究は、竹島の領有権問題を棚上げし、日韓基本条約を締結した1965年以降、停滞してきた。その遅れを取り戻すのは、容易ではないが、単に竹島の領有権を叫び、感情をぶつけるのではなく、『原点』に戻り、客観的な事実を明らかにしようと、日本側とともに、韓国側の史料・文献も研究対象としている。国際法の観点からのアプローチも始めている」
 「あまりに両国の主張の隔たりが大きいため、どこから手を付ければいいかなど、当初は戸惑いもあったが、会合を重ねるにつれ、各委員が得意、専門分野を生かし、論点整理を進める流れができつつある。最終的には、来年度末に韓国側の意見も踏まえつつ、研究会の見解を明らかにしたいと思う」

 ―研究会が発足する発端となった竹島の日条例の意義、評価は。また、竹島の領有権問題の解決に向けた取り組みと、友好は両立し得るのか。
 「日韓両国政府は昨年を、国交正常化40周年を記念した『友情年』と位置付けた。しかし、真の友情は、自らの考えを率直に語りながら、違いを認め、理解し合わなければ、築けない。日韓関係に当てはめると、竹島の領有権問題という重く、深刻な課題を抱えながら、長年、放置してきたため、のど元に突き刺さる『トゲ』がどんどん大きくなってしまった。しかも、主張するのは韓国ばかりで、日本側は傍観してきた。これでは、いつまでも、対立やあつれきが繰り返される」
 「その現状に一石を投じたのが、竹島の日条例だった。隣国との間に横たわる課題を直視し、克服した上で、本当の親善、交流に向けた第一歩を踏み出そうという考えに基づいていた。結果的に条例制定により、さまざまな行事や修学旅行などが延期、中止となり、関係者にとっては残念だったが、第2次世界大戦後の日韓関係のまさに『入り口』だった竹島の領有権問題を放置してきたことにこそ、互いに『近くて遠い国』であり続ける原因がある」

 ―条例の制定、研究会の設立以降、県内でさまざまな史料・文献が発掘されるなど、これまで低く、薄れつつあった県民の関心も高まってきた。
 「海士町の村上家や出雲市の高見家などで保管されているのが分かった文献・史料は古くから、海のルートを通じ、この地域と朝鮮半島との間に緊密な関係があり、日本海沿岸が対岸諸国との関係において、中心地だったことを示している。同時に、そこに暮らす人々が、いかに高い国際感覚を持っていたかを物語る。そういった埋もれていた歴史に、あらためて光が当たったことは喜ばしい。新たな地域づくりや交流のヒント、きっかけにもなる」

 ―今後、島根県や県議会、県民に求めたい視点は。
 「日韓関係の新たな時代の1ページを切り開いた意義とともに、責任を負ったことを忘れないでほしい。竹島の領有権問題は日韓関係だけでなく、日本がアジア、そして世界の国々とどのように向き合い、協調を深めればいいかを考える出発点になり得る」
 「そういった認識に立ち、島根県や県議会には引き続き、竹島の領有権問題に積極的に携わってもらいたいし、県民の皆さんには支えてほしい。史料・文献や研究の成果を保存、展示する場所のほか、県内外の研究機関で、一層研究を深めることも重要だ」

 ―領土問題を解決するには、外交努力が不可欠となる。日本政府が取るべき姿勢、行動は。
 「先に、島根県などに必要と言った視点、姿勢は何より、国が持たなければならない。これまでの領土問題への取り組み、体制はいずれも一面的な対応に終始してきた。だから、国の主権にかかわる問題であるにもかかわらず、北方4島は北海道、竹島は島根県、尖閣諸島は沖縄といった『地域的な課題』となってしまい、いつまでも解決しない。事態の打開に欠かせない国民的な盛り上がりも呼ばない。まさに、縦割りの政治、行政の弊害と言える」
 「奇しくも、昨年は第2次世界大戦が終結し、60年の節目だった。平和な時代だからこそ、互いの主張をぶつけ合う『対話』ができるし、認識も共有できる。竹島をめぐる問題は、単なる領土問題ではない。決着すれば、人と人との交流が広がる。物流も活性化する。日本海で深刻化している海洋資源やごみの問題に対し、手を携え、取り組む道も開ける。観光を含めた産業や環境、文化など、さまざまな分野での交流、発展の可能性を秘めていることを自覚し、これまでの反省に立って、真剣に解決を目指してほしい」
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by akikonoda | 2011-06-16 12:07 | 記憶
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