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おばあの通夜

九十年生きてきた おばあ

最後まで わからない

棺の中

閉じて開かない唇から

一本だけ生き残って 

ほそぼそと覗いている歯 を見て

そう 思った

病院のベットでは

短く刈られた白い髪を

水入らずのシャンプーで洗っていた

身体を清拭して

床ずれしないように

横を向いても

窓の外はみえない

薄っすら白い敷居に囲まれて

そうして

横を向いて眠っている

手足は日干し大根のように萎えて

お腹と足がくっついたまま

背中をさすっても

じいっとしている

目はラムネ瓶から出られないビー玉みたいで

赤ちゃんはお腹からもうすぐ出てくるところだったのに

お婆はここからもうすぐ出ていくところ

入れ替わり 立ち替わり

入れ替わり 立ち替わり

最後まで わからない

そう  思ったのだ
by akikonoda | 2006-10-05 13:47 |
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