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『秋山の石』

秋山の家に行くのは、そんなに遠くない。

ほとんど一本道でさえある。

ちょっとした坂を登って、左手に曲がったらもうすぐなのだが、裏道の方に出るので、そこを通りすぎて、角を曲がって表通りに面した、あの大きな石が目当てなので、表門から入る。

門といっても、大きな石が置いてあって、反対側には、植木やら盆栽やらに紛れて、中くらいから、小さい石が、大きな家の囲いになるように積まれたり、思い思いに置かれていたりするのだった。

石が自然発生的に、ぼこぼこと音を立て、地中深くで細胞分裂して、徐々に盛り上がり、この庭に生れてきたのではないか、と思えるほど石だらけの家であった。

「秋山産」と銘柄を付けたくなるくらいである。

今さっき、持って帰った、たんぽぽの横に丸まっていた石もいいが、ここのどれか小さい奴を一つを頂いて、本物の秋山産、「秋山の石」として、愛でてもいいなと思っていたら、秋山が表に出てきた。

 お前、石ばっかり見て、何が面白いの。
 家の親父と同じように変な執着もってるよな。

 道端で踏みつけられるのも石だとすると、ここにある石もまた石で。
 石が、石として、ここにある意味を思うと、なんか、こう、時間がなくなっていくような気がしない。

 全然分らん。何いってるのか。ただの石だろ。 どうでもいいけどさ。とりあえず、寒いから、中入ろうや。

 
by akikonoda | 2006-12-20 13:47
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