髪を濡らしました。
薔薇の香りでむせ返るような液体で髪を洗う為に。
山の向こうにある薔薇園で、薔薇水が作られているのを思い出しました。
小・中学生合同の修学旅行で薔薇園を訪れた時のことです。
そこで、薔薇の変わり果てた姿を見たのです。
薔薇が咲いている庭から、土壁と薄い色とりどりの薔薇色のタイルが埋め込まれた家の中に入ると、開け放たれた窓の外から柔らかい陽が差し込んでいました。
光が匂いを蒸発させている。と思いました。
その揮発された香りは、窓の外からやってくる風と混じり合い、いつまでも、薔薇のはっきりと見る事の出来ない残像を、部屋中に、気まぐれに、ばらまかれているような気がしたのでした。