人気ブログランキング | 話題のタグを見る

鍼灸師 一服堂



 竹波の治療を見ているだけであったが、竹波には、どこかにあの鍼のような特異なセンサーがあるように見えたのは、迷い無く、肌の上を這うその手先の動きの巧みさであった。

 警察犬の濡れた鼻先のように、見えない匂いを嗅いでいるような動きと言おうか。

 見えない体中に滞っている「しこり」を探り当てるかのように、手だけが勝手に歩き回るのである。

 そうして、いったん、そこに、滞ったままのものを見つけたならば、迷い無く、そこに細い筒を当てがい、その中に、か細い鍼を通して、とんとんと生き物のような指先でもって、軽く打ち付けるのであった。

 一度だけ、五島は聞いた事があった。

「そこに、いわゆる、東洋医学で言うところの つぼ というものがあるのでしょうか」

「あるといえばある。決まりきったものではないが」
by akikonoda | 2007-10-12 15:00
<< はなみち くいちがい >>