竹波の治療を見ているだけであったが、竹波には、どこかにあの鍼のような特異なセンサーがあるように見えたのは、迷い無く、肌の上を這うその手先の動きの巧みさであった。
警察犬の濡れた鼻先のように、見えない匂いを嗅いでいるような動きと言おうか。
見えない体中に滞っている「しこり」を探り当てるかのように、手だけが勝手に歩き回るのである。
そうして、いったん、そこに、滞ったままのものを見つけたならば、迷い無く、そこに細い筒を当てがい、その中に、か細い鍼を通して、とんとんと生き物のような指先でもって、軽く打ち付けるのであった。
一度だけ、五島は聞いた事があった。
「そこに、いわゆる、東洋医学で言うところの つぼ というものがあるのでしょうか」
「あるといえばある。決まりきったものではないが」