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心臓が動くたびに



心臓が動くたびに
一秒を要するとするならば
いきものは
幾度のたびをするのであろう

一秒のたびごとに
血が身体をめぐるならば
傷をなめまわすように流れる血は
世界の果てにたどり着いたものたちであろう

心臓は地球の真中を核にした
柔らかい林檎の果肉であるならば
脳は地上にはい出した
乾いた胡桃であるだろう

心臓が動くたびに
林檎は赤い血のようにとめどなく落ちて
地球が動くたびに
胡桃は硬い殻をかち割るように締め付けられて

心臓が動くたびに
つかれたものは
赤から青へ次第に変わって行く
血脈を測ることもしないで

地上に流れ出してくる
赤黒いヘモグロビンの固まりのような
マグマの夢精など
みようともしないで

ヘモグロビンの赤い一生は
朝日と夕日に挟まれた
一秒のたびの途中で
青い影を帯びて行く

紫の心臓に戻って行く
宇宙塵が風に舞い降りて来たら
墓場からはい出したものたちは
また一秒のたびに戻って行くのだ
by akikonoda | 2007-11-08 10:31
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