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影つぶしの穴




幻影師のおもかげを追うように

みえない影とみえすぎた影が

言葉にのりうつっていく

それは病院の近くの建物から

なにものかに突き落とされた影のように

いきぐるおしい朝にやってきた


太陽の影がひとつの黒点の夢にしぼられるように

ある男の夢精によって

幾つもの男の分身が太陽の影に溶けてしまうまえに

永遠に消えそうもない

影の分だけ横にずれることによって

一日 生きながらえていた


一方 

電子メールの真偽の影ときたら まちまちで

うすぐろいあわゆきのはかない影かとおもえば

あの男は年増女に

十万円で春を売っていると

なんらかの恨みか魂胆を持った女か男か


あるいは 只のはらぐろい愉快犯に 

しっとのまじった言葉を

まきちらかされている事に

きづいているのか 

いないのかさえわからない

こおるたあるのねっとり蠢く影となる


冬の影は一度でも 

春と聴いたものにとりつき

その人の影になったかのように

はなれようとしなくなる

瓶に閉じ込められた腐りかけの果実に

花の死臭がこびりつくように


影は

己のしらないところで

己のあった事も 

しったこともない影を

見つけては 

つぶしてまわっていた


ひとりのこされた幻影師が

影にのまれた影をさがして

電影を立ち上げ

追いかけてはいたが

いつのまにか 

影に追いかけられていた事に気づく


そこからもれた影の金色の光が

どこかにあるという鼠の夢の国で

赤い半ズボンと蝶ネクタイと黒い大きな耳を立たせて

陽気にうたって はずんだりしていたが

幻影師は その黒い耳穴にある影が

つぶされないようにと影ながら願うばかりなのであった

 
by akikonoda | 2009-01-14 08:54
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