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きいろでんしゃ



みどりまち きいろでんしゃが きえていく ばくげききえた しょうろくの夏も
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by akikonoda | 2007-03-31 21:24

『船、ねむる』



 その日の夕方に電話が在り、今こうして、二人だけで会って、難破船の晒されたままの海を見ているのだった。

「油が残っているのかな。虹みたいだね」

 映子が言った。

 燃え尽きた後もなお、取り残された油なのだろうか、波に揺れるたびに、虹の亡骸のように、揺れる水面に、ゆれゆれと極彩色を歪めながら立ち現れていた。

「そういえば、雨上がりの虹が始まるところに、市を立てる習わしがあったと、昔の文献で読んだことがあったような。確か、中沢新一も書いていたけど。その中沢の言葉に乗っかって、どこかの新興宗教のカリスマも大いに感銘を受けたって、聞いた時は、正直、驚いたけど。そのカリスマは、テロルの主犯として、今度、死刑に処されるということではあるが」

「そういえば、そうらしいね」

「宗教を信じられない自分が言うのはおかしいけど。同じことを聞いて、同じようなことを感じていたとしても、同じ行動を取る訳ではないのが、人間の不可思議さではあると思わずにはおれなかった。その人の生まれ育った環境要素やその人の持っている癖のようなものを無視することは出来ないのは当然だけど。そのカリスマは実際に、テロルを指示して、極刑に処されることになったが、死刑そのものには、死刑執行に関わるすべての人の存在を忘れている事実があって、なんとも言えないものがある。死には、その死を受け入れるものと、受け入れさせる存在がある」

「そもそも、過激なものたちが、起した殺人事件だから、死を受け入れるも何もなく、ただ、殺されなくてもいい人達が、たまたまそこにいたというだけで殺されただけのことでしょう」

「確かに。たまたまそこにいただけのことで。それだけのことなのに、死んでしまうのは、なぜかと思い始めると、なんだかおかしなことになっていくんだよね。そもそも、宗教において過激派なんて言う、訳の分らない言葉が行き交うのにも、嫌悪感を覚えて、おかしなことだと思うけどね。宗教間の争いも、得をするものたちによって煽られているような側面は付き物でね。今も続いているイラク戦争でも垣間見られることで」

「イラク戦争は、どう逆立ちしようが間違いということを、米国本国でも、認め始めたよね。そもそもの過激派と名指しされたものたちがやったことではないとさえ、囁かれているのだから」

「誰がやったかは、近い将来、はっきりすることだろうけどね。何よりも、そのテロルに到るあらゆる成り行きを、目の当たりにしたことのないものとして、その成り行きを、しっかりと見知ったのでないならば、はっきりと断定したことは言えないと少なからずは、思っているが。一応、心理士として職業柄、決めつけることには、抵抗がある。その可能性がある。ということが言えるだけでね。でも、変わりようのない事実は、いろんな形を帯びて、いつか浮かび上がってくるとはどこかで思っている。この鉄くずになった船みたいに、動きようもない錆びついた事実かもしれないが。この世界で、戦争や宗教の名を借りて、いとも簡単に、兵器で人を殺す、あるいは、殺す指示を出すことや、自分を殺すことも辞さないことが、過激であるとするならば、過労死を見過ごして、奴隷のように働かせる社会もまた、ある意味、過激ではあるよね。過労死ではなく過激死的なものを、感じないわけではない」

「そういう風に思うということ自体が、私にはよく分らない。なんだか、殺すとか殺されるとか言うこと自体が怖い。響の言ういちいちが、怖いような」

「確かに、亡くなった人のことを思うと、推測でしかない、分らないとか妙な物知り顔で言われても、胸がむかむかしてくるような、うすら寒くなるような怖さを感じるのもわかる。もしかして、自分もそこにたまたま居合わせていたとしたらむかむかしながら吐いて、吐瀉物に塗れながら死んでいたかもしれないと考えたりすると尚更だけどね。ほんの少しの時間の差で、テロルの起ったという地下鉄にいた知り合いの人に聞いた話を思い出すよ。その人は、たまたま、友人の芝居を見に東京に来ていて、その芝居を観に行く為に乗り込んだ地下鉄で、毒物がばらまかれた後の地下鉄を通りすぎたんだって」

「ああ、その話なら知ってる。あの文芸部の変わった人でしょ。授業に全然でない人で、妙に浮いてた人でしょ。近松って言う人だったけ」

「そう、あの人。あの人と変わってるもの同士の繋がりのようなものがありましてね。彼女が出ていた数少ない哲学の授業で隣りの席になった時に聞いたんだけど。彼女が乗り込んだ時は、すでに事件は起っていた。毒に吐き気を催して、次々に倒れていった人達は、すでにそこにはいなくて、死んでしまったような駅に辿り着いた。でも、扉は開かなくて、何が起ったか知る由もない何人もの人を乗せた地下鉄は、そのまま鉄の扉を開くことなく、素通りしたのだと。彼女は、檸檬を絞った後に手の平に残る渋味の残ったつんとくる匂いがしたような気がしたと言ってた。人々の吐瀉物の残臭だったのだろうけど。でも、扉は開いてなかったのだから、その時に感じた、彼女の内面からにじみ出る酸っぱさだったのかもしれないね。人は内面に酸っぱいものを抱えていてね。あらゆるものを溶かして、我が物とするような直接手に触れては行けない液体を持って、何食わぬ顔で生きているだけなのかもね。と、彼女は、何度も、何度も、古くて壊れたカセットテープか、レコードを操ってるのか操られているのか良く分らないクラブの人が作り出す音みたいに言ってたけど」

「その話は、なんとなく、聞いたことがあるよ。その後、彼女は授業にでなくなって、ますますおかしな感じになったっというのも聞いたけど」

「うん。彼女はかなり、気に病んでいた。なぜ、自分はあそこを通ったのだろうと。死の匂いを嗅ぎつけたみたいに、なぜ、あそこを通ったのだろうと。取り憑かれたみたいに話していた。自分は、それを聴くことしかできなかった。それを、今も続けているだけかもしれないけどね。彼女が大学のピアノの練習室がカプセルホテルみたいに並んでいる6号館の屋上から、卒業式の直前に、翔んでしまったのが、今も、いつでも、どこかに残っていて、忘れられない。彼女自身、就職が決まっていないということもあったのだろうけれど、あのテロル事件は、少なからず、彼女の内面に巣くって、彼女から最後まで離れなかったのだと思う。時々、学会で大学に足を運ぶこともあるけれど、彼女の翔んだ6号館の前をどうしても通ることが出来ない。6号館の前の煉瓦に、白いチョークで囲われたままの彼女が横たわっているような気がして」

「うん。同じ学部の友達に聞いたよ。直接知らないひとだったから、私も、なんともいえないけれど。響がそれほどつきあいがあったのも、知らなかったけど」

「自分も、結局、なんともいえないままで。ただ、人の話を、空ろになって聞いているようなところがずっとあってね。箱庭療法という方法を見つけて、少しづつ開放されたような気がしてはいるのだけれど。今も、時々、思い出しながらも、自分の中で、少しづつ受け入れられるような言葉に出来るようにはなって来たのだけれど。実のところ、自分の過去と向き合うことで手いっぱいなのだから、研修はいつまでも続きそうだよ」

「過去とは、どう足掻こうが離れられないよね。今とは離れられるかも知れないけど」

 そうつぶやくように言うと、映子は、また揺れている虹色の油を見た。

「自分にとって、虹の話は、死を垣間見るような生々しいものではないから、ほっとできるのかもしれない。推測とかを軽々と乗り越えている。人や、その場にある、あらゆるしがらみのようなものを軽々と越えた、軽やかなものとして、自分の中にすんなりと入ってくるような気がする。人やものが行き交う場になる前に、虹色の手に触れることが出来ない門のように立ち上がり、天翔る。まるで、見えない透明な天国への扉を隠し持つ門のように、どこか訝しげな生命を孕んだようなものなのとしての虹のイメージ・象徴は、新鮮だったのを覚えている。結局は、虹の話も推測でしかないのだろうが、自分にとって、心をゆるゆると揺さぶる話であったのは、人の思考や行動に直結したものではない、幻のような、ふうわり浮かんだような心地よさがあるからかもしれない。そういえば、虹にも雌雄のようなものがあるって。漢字の書き方で、より分けていたような」

「漢字が苦手なのに、国語の教師をやっていた自分を呪うようなことを言うね。もう、勘弁して欲しい。なんだか、海が荒れてきたようだね」

 映子は、また、難破船を見ているのか、海を見ているのか、その上を飛んでいるわんだーふぉーげる(渡り鳥)を見ているのか、分らないような眼差しをして、そこに、ただ、立っていた。
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by akikonoda | 2007-03-31 17:21

くみあわし



くみあわし かいとけやきの はこのなか ねじまくおとの てんかいひびき
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by akikonoda | 2007-03-31 16:48

中東和平における動きについてのある考察



イスラエル副首相「中東包括和平案、交渉の用意ある」
 【カイロ=金沢浩明】イスラエルのペレス副首相は29日、地元メディアなどに対し、同日にサウジアラビアで開いたアラブ首脳会議が「中東包括和平案」に基づきイスラエルに直接交渉を求めたことについて、「アラブ諸国と直接交渉を始めるべき時が来た」と述べ、応じる用意があると強調した。

 同副首相は和平案については「そのまま受け入れることはできない」と繰り返したものの、「溝を埋めるには交渉しかない」と指摘した。

 また、オルメルト首相も同日、与党内の会合で「影響力のあるアラブの国々がイスラエルは脅威ではないと理解したことは画期的な変化。和平案自体に驚きはないが、雰囲気や方向性に関心を払うべきだ」と述べ、交渉に前向きな考えを示唆した。 (09:56)

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 イランの英兵拘束の経緯がはっきりと見えてこない状況であったが、そのそこに流れる動きが見えてきたような。

 イスラエルの動きを見てからでないと、なんとも判断しがたいと思っていたが。

 ここにきて、やはり、トラップ的な要素を含んだ上での領海侵入事件で、前哨戦、あるいは、つばぜり合いの中で、国際的圧力、包囲網を促し、イランを封じ込めようという戦略が見え隠れしてきたように思える。

 いずれにせよ、戦争を避け、それぞれの国の発展を阻止しすぎることのない世界が望ましいのは、言うまでもない。
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by akikonoda | 2007-03-31 16:01

『船、ねむる』



 映子と、桜の咲いた成田山の桜を見に行った時のことである。

 海は今も動いているというのに、どこの国のものか不確かな、どこにでもあって、どこのものでもなさそうな、無国籍の乗り捨てられた難破船は、永遠に動くことなく、ただ朽ち果てていく時間にもたれかかっているように見えた。

 生きているのか、死んでいるのかさえわからない。

 赤さびた鉄仮面を被ったまま、静かに、しかし、疲れ切ったように横たわる、古戦場で野ざらしになったままのひとを思わせるのだった。

 かつて、確かに、ここで戦いがあったのだが、今は、もう、そこであったことを知らしめるものが、あまりのことに、口を噤んでしまったかのようにも見える薄ら寒さなのだ。

 無口だが、蠢くものを隠すことなく晒している後景。

 ねむったまま、朽ち果てることを知り、泣いている人のような気もしたのは、なぜだろう。

 目に風に混じった砂ぼこりが入ったのか、映子が眼鏡をずらして、目頭を拭っていたのを見たからかもしれない。

「映子、どうかした」

「いや、ちょっと、目に何か入ったみたいで」

 幼なじみの映子は、昔から、丸眼鏡をかけた目の奥にどことなく人のよさを漂わせた笑みを持ったひとだった。

 学生時代は違う学部と違うサークルに所属していたので、なかなか会えず、その後、響が臨床心理士の仕事を始めてから、昔の友人達とも会うことが少なくなっていた。臨床の心理士であるにもかかわらず、人付き合いが、事の他、下手なのである。正直に言えば、臨床の時間にすべてを費やして余裕がなかったのもあるが。たまたま、響が推敲中のものに関連した文献を図書館に探しに来ている時に、ちょうど、双子を連れた映子が、絵本を探しに来ているのに、出くわしたのだった。

「もしかして、映子ちゃん」

「あれえ、もしかして、響ちゃん。変わってないねえ。相変わらず畦道みたいな髪形で、すぐ分ったよ」

「ああ、これ。そういえば、そうだ。長くなったり短くなったりを繰り返しているけど、結局は、ここに行き着くような。畦道か。なんか、昔を思い出すような」

「ははは。田舎道でも良いけど。かわずや蜻蛉が飛び交う道を、野良猫か野良犬みたいにうろつき回っていたからね」

「もしかして、この双子ちゃんは映子ちゃんのお子さん」

「そうです。私に妙に似ているので、こなたもそなたも、ややこしくて、よくわからないって言われるが」

「確かに。見事な相似形というか。大まかに見て、二等辺三角形にも見えなくもないほど、親を頭に子どもたち二人という完璧なまでの三位一体のバランスのよさのようなものを感じる」

「相変わらず、響ちゃんは、訳の分らないことを言いますね。まあ、なんとなく、言ってることはわからないでもないけど」

 映子は今は高校の国語の教師をしているらしい。

 結婚をして、幼い頃からフルートを続けていた映子は、吹奏楽の仲間で、セロ弾きをしている方との間に双子を授かったという。

 双子を産んだ時点で、一気に体力と気力を消耗したのは頷けるし、その後の双子を育てる上での日々のせわしなさに思いを馳せると、何かと体調を壊しがちであると言う映子の話も頷けることであった。

 響も、二人の子供を育てている上で、その休みのない状態は予想できることであった。

 今は育児休養に入って、子供と一緒の時を過ごしていると言うが、どこか、落ち着きのない、映子が気になってはいた。職業病の一つの現れかもしれない。

「わけもなく疲れるのは、産後の肥立ちが悪いからと言うこともあるのかも知れないけど。最近、どうも何かが抜け落ちているみたいで怖い。ちょっとした注意も拡散してしまって、纏まり切れないような感じでね。子供とばかりいると、言葉が生まれる前から、子供と一緒にやり直しているみたいで、話が飛び飛びになって、困ってしまう。実際、働いている時の時間の流れが、何だったのかと思える時がある。親子たった三人だけの世界で完結してしまう。この世で最初で最後の親子みたいな気分になって。このままじゃ、ねえ、どうしようもないっていうような。ねえ、響ちゃんはどうだった?もう、随分大きくなってるのでしょう。お子さん。今度、ゆっくり、会って色々話したい」


 と、ちょっと、焦点が合っていない眼差しをした映子が、とりとめも無く、つぶやくように、抑揚もなく、ただ、しゃべり続ける。

「いいよ。じゃあ、今の連絡先、渡しておくね」

 響は、連絡先を渡して、双子の女の子と男の子の頬を右手と左手でそれぞれに、そおっと触って、その場で、別れた。

 映子は、響も子供の頃に読んだことのある、昼寝の好きならいおんのでてくる絵本を片手に持っていた。

 もう片方の手は、ゆらゆらといつまでも振って、そこにたっていた。
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by akikonoda | 2007-03-31 13:33

あたたかな湯につかり、幽霊坂を思い出すよふな。



体調の変化の著しい春。

本調子とはいかない身体をやすめようと、実家に近いとあるところで、あたたかなころいど湯につかった。

白雪をとかしたような色をした湯にゆるりとつかりながら、しんのところでかすかな春を感じつつ。

実家にかえる道すがら、桜の咲いた成田山(いたるところにあるもののうちのひとつ)の幽霊坂を車で走ったのを、ふうと、思い出した。

登っているのに下っているように思う。

下っているのに登っているように思う。

の、どちらかだったと思うが、体調がいまひとつで車から降りなかったし、昼間ということもあったので、実感はわかなかった。

昔、友人と訪れた時は、夜ということも在り、ちりちりするような物の怪臭を醸し出し、何かこの世ものとは思えないものさえも、垣間見れるような雰囲気を醸し出してもいたのだが。

それにしても、桜も昼間だとどこかあたたかく陽に融けているような和らぎがあるが、夜はどことなく寒さに震えているようで、いまにも、夜に消えゆきそうに感じてしまうのは、なぜだろふ。
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by akikonoda | 2007-03-31 09:22

さわぐ気になれず



バグダッドなどで連続自爆テロ、129人死亡
 【カイロ=金沢浩明】イラクの首都バグダッドとその郊外で29日夕、大規模な自爆テロが起き、ロイター通信によると合計で129人が死亡した。爆発はいずれもイスラム教シーア派地区で起きており、スンニ派武装勢力による犯行との見方が多い。

 バグダッドでは北部シャアブ地区の市場の人込みの中で爆弾を身につけた2人が自爆し、買い物女性や子供など76人が死亡、100人以上が負傷した。バグダッドから約80キロメートル北のハリスでは商業地区、警察の検問所などで自動車が3台続けて爆発し、53人が死亡、100人以上が負傷した。

 イラクでは北部のタルアファルで27日の自爆テロで85人が死亡するなど、大量の火薬を使ったテロが最近頻発している。(10:07)

日経〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

事態は一向に、改善されていない。

石油価格が落ち着いたように思えると、なぜか国際情勢の不安要素が高まるような傾向があるように見受けられるのは穿った見方かも知れないが、そういうことに知らず知らずのうちに巻き込まれ、荒らされているイラクの人のことを思うと、どんちゃんさわぐ気になれず。

ただ静かに友と花を見ているのなら、気持ちも落ち着くのだが。
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by akikonoda | 2007-03-30 10:49

あめふりの



あめふりのあとの花見のくもりそら 
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by akikonoda | 2007-03-30 10:02

すなどけい



すなどけい ときのひとすじ あなとおり ちいさきやまのうえにおちゆく
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by akikonoda | 2007-03-30 09:58

『夕べのこと』



 髪に泡立つような見えない薔薇を含んだ匂いが、ふくらんでは、はじけていきました。

 そうして、いくども、薔薇の匂いを醸し出すように、髪を波打たせました。

 修学旅行で立ち寄った土壁の中で出会った、まだうら若い少女が被ったヘジャーブも、そういえば、黒々とした小さな夜に咲いた、小さな薔薇の花園のようだったのを思い出しました。

 彼女達は、深い茶色の瞳で、こちらをそおっと見つめて、それに気付いた私に、静かにはにかむように微笑んでくれました。

 薔薇は匂いとともに、形を無くしながらも、彼女達のへジャーブの中の夜へと、融けていくようにも思えたのでした。

 それから、シャワーの生ぬるい雨のような飛礫を頭から降らせ始めました。

 沈んでいく太陽に透かされた、淡い小さな薔薇の香りのする夕べから、黒々とした深い眠りに移った見えない薔薇の気配を醸し出す夜へと移っていくのを、どこかで感じておりました。
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by akikonoda | 2007-03-29 19:35