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河合隼雄のしゃべくりに救われた者として

 河合隼雄のしゃべくりは、へたな漫才を聴くよりおもしろい。

 彼はユング派カウンセラーであったが、今は文化庁長官である。
 その彼が、昨日、脳梗塞で倒れた。
と言う話を聞き、自分の心の支えを失うような喪失感を感じた。

 ここ数年、文化庁長官という職務に身を投じていた彼が、重要文化財の保存に関する不手際が発覚して、(高松塚古墳の壁画のでしたね)おわびしているのを見て、彼の文化をこよなく愛する姿勢も技術無くして成り立たないものなのであり、その点で不手際があったのは否めない事実なのであろうが、責任をとると言うことが、いかに空疎なものであるかと思わずにおれなかった。

 とりあえず、現場で保存に当たっていた人にも責任はあるだろう。
 確かに頭になっているものが責任をとらなければならないのは世の常であるが、本人のそれまでの動向をたまたま興味を持って、共感を持って見続けた者にとっては、なにか違和感がある結果であった。
 何年も前から行われたことの結果を背負うことになろうとは予想できないことであるし、そのお詫び行脚のような行為で疲れ果ててしまったのではないかと思わずにはおれない。

 しかし、彼は結果として、色々なものを背負うことを選んだのである。

 色々な個人の、秘密に耳を傾け続けた結果、病みつつある疲れ果てた日本と言う国のカウンセリングをも引き受けてしまった彼は、文化を大切にする余裕を持つことが今の状況を打破できる一つの手だてと思っていたのではないかと、勝手に想像している自分。であるが。
 
 とりあえず、意識不明のまま生き永らえている彼であるが、カウンセラーや一人の人として語る彼のしゃべくりや著書に触れ、色々な危機的どん底状態から救われた気がする者として、隼雄氏の復活を強く期待する。そして、私はついに三途の川を見た!?いやあ、帰りたくなかったですねえ。などという、軽快なしゃべくりをまた聞かせて欲しい。
by akikonoda | 2006-08-18 12:18
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