パン教室が久しぶりにあった。
先生が足を骨折して、二ヶ月の長いブランクを乗り越えて再開された、記念すべきの第一回目の作品は「うさぎぱん」と「こるね」と「ロールケーキ」だった。 うさぎぱんは、中に、カスタードをほどよく入れ、成形して行くのだが、細かく分類すると二つのパターンがあった。すわっているうさぎとはねてるうさぎだ。 そういえば、かつて、THE座(ざざ)という、ただ車座になって座るだけのグループを立ち上げたと宣言していた、妙に未来派好きの友人がいたが、その後活動はどうなったのか?と思い出しながら、座るうさぎに生命を吹き込もうとした。切り込みの妙を教わる。はずんでいるウサギにも着手した。足が少し短かった。 長い耳をつくり、赤い目にはじぇりーをのっけて、焼きに入った。 こるねは、円錐形の金属の筒に、パンを巻き付けて行く。 金属のコーンにからみつく一匹の蛇の亡骸をはがしてショコラクリームを流し込む。 これは、なんだか、自分のイメージの中の宇宙の形に少し似ている。 くるくる渦を巻きながら、先に進むその形。 最初はふとくあらく、最後はほそく緻密になって行く。 中身は空洞であって、空洞でなく、何かしら軟らかい暗黒、漆黒のものに満たされているような。 こるね宇宙論。をこねる我ら、それを喰らう我らは、一体、何さまだろう。 そういえば、久しぶりに、そば屋にはいって、はしゃいでいた子供達に、お母さんは何様?と聞かれたのを思い出した。 おれ様。 とすんなりかえしたが、 じゃあ、ぼくは、王様ね。と切り返してきた。 さらに、連れ合いは、 じゃ、俺は神様。 と、ぼそっとつぶやいた。 まことにおそまつさま。でした。 ロールケーキは天使の羽のようなもので、パンこね機でかき回していた。 このぱんこね機はいいなと思った。 今は原始的に、手ごねをしているが、いずれ、家内工業的に、こういった技術も取り入れいく時が来るのかなと思ったが、しばらくは、心と身体の健康を兼ねて、手ごねでいくしかない。インフラには資金がいる。もう少し、自力でなんとかしましょう。 なんとか、納得いくものに出来上がったつもりで、何個か試食して、残りはお持ち帰りした。 息子が、帰ってきて、パンの匂いに気づいたのか、テーブルを覗いて、 あっ、うさぎだ。 と手に取ろうとした、次の瞬間、 おかあ〜さん。このうさぎ悪ものなん? なぜだ。からだは少々焦げ茶だが、まるまるふっくらとそこに座っていて、悪びれたところなどすこしもないではないか。 このうさぎ、目が赤いっちゃもん。悪ものやろ。 という。赤い目の昆虫は悪ものとされた昆虫の物語を踏まえての発言らしい。 そういわれてみると、何かに憤怒して、泣きはらした目にも見えて、瀕死に横たわっているようにも見えなくもない。 食べられる前の、君は、いなばの白うさぎ。 残酷物語は、その後、幾度となく、繰り返された。 ごちそうさま。でした。
by akikonoda
| 2006-09-15 12:11
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