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『どろん虚』

17 亀城の乱

 大韓朝国は、成金総書記が、亀城の地下施設に潜伏していると言う情報を察知して、秘密裏に動いていた。

 自己崩壊するのを黙って見ていることは出来ないのもあるが、核兵器を持ち歩かれることは、危険極まりないからである。

 一番被害に遭うのは、身近に暮らすものなのだ。

 しかし、何よりも、北朝鮮時代を支えてきた貧困による思考停止状態をなくし、自ら考える気力を持てる国民が一人でも多く育って行くしかないとも、政府筋は考えていた。

 まだ、かつての後遺症は残っていたのだ。

 様々な考えがあるのは大前提だが、力で押さえ込むことしか考えないのでは、何時までたっても先に行けないとも、誰しも考えていたことであった。

 かつての北朝鮮のように行き詰まるのは目に見えていたし、貧富の格差は拡がるばかりなのである。

 政府の諜報機関は、もと北朝鮮の兵士が目覚めることを促す戦術を立てることにした。
 手始めに、核兵器を渡す見返りに、宇宙に連れて行くと言う懐柔策を練った。

 これには、若い兵士は、敏感に反応しそうな気配があった。

 地下にいつまでも潜っているのも身体に悪いし、ウランを掘りだして、濃縮するのも、成金総書記が自らするわけではなく、身体に害が及ぶのを覚悟で、若い兵士がやらなければならなかったので、尚更である。

 あんまり地下生活が長いと、太陽光に晒される、普通の生活には戻れそうもないほど眩しすぎて、目が見えなくなりそうだし、正直、青い草を食べたり、幼虫を食べたりする、地下生活にはうんざりしていたのであった。

 成金総書記は、相変わらず、豊かな食生活をしようと、兵士達に、調達を促すのであったが、もう、それも限界に達していた。

 育ち盛りの兵士達も、米の飯が食いたい。と思っていたのだ。 

 本当は、誰も、動けなくなるほど、何もかも病弊していたのである。

 もと北朝鮮の兵士達は、核兵器と宇宙への旅を引き換えに、成金総書記の身柄を引き渡すことに応じようとし、クーデターのクーデターを企てたのだった。

 ここにいます。

 と、教えるだけなのだから、簡単なことであった。

 後はどうなるか。

 当然、成金総書記のやって来たことがものを言うだけであった。 

 
 
by akikonoda | 2006-10-10 14:45
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