在留特別許可認めない方針ということを法相がいったということである。
イラン人一家4人は、日本に対して失望しているだろうと思うと、なんとも忍びない。 イラン人で、仏蘭西在住の漫画作家がいる。 マルジャン・サトラビという方で、「ペルセポリス」という漫画を描いている。 1969年代うまれで、自分と同じ位の年だが、イランや欧羅巴での単身暮らしたなかで起った出来事を淡々と描いている。 ニューヨーカーなんかにも描いているらしい。 彼女の目線は、妙に乾いていて、誰にもよりかかっていない。 ただ、じっと、ひとりで、何かが来るを待っているのではなく、何かが過ぎ去るのを待っているような、空ろな漂流者のような眼差しなのである。 だからこそ、何かを表さないと生きていけないような、祖国を失った者の頭の中で響いている干からびた木霊の揺れる音のような、はっきりとらえることのできない、限りなく無感覚に近い喪失感を漫画で表現している。 その押さえられたにぶい痛みを感じるような、無表情な絵を見るにつけ、 亡命。 と言う言葉が浮かんでくる。 アガタ・クリストフも祖国を離れて、祖国の言葉を使わずして言語表現をしているところが、似ているが、まだ、彼女の方が、乾いたおかしみが残っていて、どこか突き抜けているようなところが感じられ、なんとか、たえられる痛みのように見受けられるのだが。 一方の「ペルセポリス」の作者には、どうしても、どこにも属さないものの命のありどころを、浮き島のように漂っているような幻想を、孤島のように亡くしてしまった命のありどころを、どうしても感じてしまうのである。 自分は、日本でうまれて、日本でうまれた日本人ではあるが、幼い頃、トータルで5,6年はイランにも住んでいたので、彼の地は、命のありどころの深い部分に繋がった場所でもあるのだ、ということを最近よく思う。 もし、彼の地に、二度と来るなと言われたら、命の幾ばくかが切り取られてしまうような、遭難した命をひとときでも生き永らえさせる浮き島を無くしてしまったような朧な喪失感を抱きながら、生きなければならないだろうと予想される。 日本に残りたいというイラン人一家は、浮き島さえ亡くした、亡命者となるのであろうか。 少なくともイラン人作家を受け入れている仏蘭西にはできたことである。 他の国の人を受け入れる土壌のない、狭くるしく、息苦しくなりつつある、おおらかさを亡くしつつある日本という孤島の本質を見せつけられたような気がして、誠に残念である。
by akikonoda
| 2006-12-05 16:40
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