原潜と接触 現場、往来多い難所 川崎汽船が情報収集
2007年01月09日13時39分 「大きな揺れを感じた」。9日早朝、ペルシャ湾のホルムズ海峡で米原潜と接触したタンカー「最上川」は、川崎汽船に衝突時の様子をそう報告してきた。現場は、船の往来が多く海流も速いため、潜水艦にとっての難所になっている、と軍事の専門家は指摘する。 「最上川」を所有する「川崎汽船」本社(東京都港区)は9日午後、記者会見を開き、最上川に事故直後、原潜側から「事故にあったようだ。アシストは必要か」と無線連絡が入っていたことを明らかにした。 最上川は「調査中だ」と答え、原潜側に国籍や船名を尋ねた。しかし、原潜側は「サブマリン」と答えただけだったという。 川崎汽船へは、事故直後、最上川の日本人船長から「衝突時には、大きな音と揺れがあった。積み荷の原油の流出はない」と報告が入った。 同社は一報を受けて9日午前9時過ぎに社内に事故対策本部を設け、情報収集にあたっている。 難所とされるホルムズ海峡の通行について「狭い水路を航行するときのマニュアルに従っていた。船長も船長歴7、8年の熟練者だった」と述べた。事故原因について今後、調査する意向を示した。 「最上川」の乗組員は9日午後1時ごろ、朝日新聞の電話取材に、こう答えた。 「とにかく全員無事でけがもなく、大丈夫です。詳しいことはすべて(川崎汽船)本社に電話で報告しており、いま対応を待っています」 川崎汽船、昭和シェルの両社によると、「最上川」は今月7日に原油28万トンを積んでサウジアラビアの港を出港し、シンガポールに向かう途中だった。事故後、船は低速で航行し、アラブ首長国連邦(UAE)のコールファッカン港に向かっているという。 ■海峡、原油の「通行路」 ホルムズ海峡は、サウジアラビアやクウェートなどから積み出された原油を運び出す航路に位置する。この海峡を経由してアラビア海に抜け、日本を含む世界中の消費地に運ばれる。 幅は約40キロ。このうち、大型タンカーが通行可能な水深がある場所は10キロ程度しかないとされる。戦略的な位置づけは極めて高く、80年代のイラン・イラク戦争時には臨検や拿捕(だほ)などの動きも相次いだ。このため、原油価格が高騰し、世界経済に大きな影響を与えた。 軍事評論家の江畑謙介さんによると、ホルムズ海峡は狭くて浅い中を多数の船が航行している。原潜にとっては沿岸部を走る船の音も含めて多数の音が聞こえてくるため、ソナー(音響探知機)だけで安全性を確認するのが難しく、潜望鏡を出せる深さまで浮上していた可能性があるという。タンカーの場合、油を積んでいた状態で海面から船底まで大きな船で30メートル。原潜が潜望鏡を上げるには海面から15メートルくらいまで浮上する必要があるという。 軍事ジャーナリストの田岡俊次さんによると、衝突現場付近のペルシャ湾は、イランの核開発問題に対する示威目的でアメリカの空母が入っている。ニューポート・ニューズはこの空母の前方を哨戒する目的で航行中だった可能性がある。「潜航中の事故であれば、回避の責任はすべて原潜にある。最上川は水面から船底まで満載時は21メートル余りあるから潜水艦の司令塔などに接触したことも考えられる」という。 ◇ 〈キーワード:ニューポート・ニューズ〉 米海軍の主力潜水艦であるロサンゼルス級攻撃型原子力潜水艦。水中排水量約6900トン。直径約10メートル、全長約110メートル。89年の就役。 ロス級潜水艦は冷戦中の76年から大量に配備が進められ、ジェーン年鑑によると、これまでに49隻が配備されている。騒音が小さく高速で航行できるのが特徴。魚雷のほかに巡航ミサイル・トマホークも搭載しているほか、兵士の輸送、インテリジェンス情報収集能力を備えている。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 こういう事故があるということは、心理学で言うところの無意識領域から浮かび上がる危険、日本にも影響を与えるであろう沈んでいた危険が、ふいに浮かび上がってきているといった、ある種の警告的な意味合いを感じる。のは、自分だけであろうか。 深手でなければいいが。
by akikonoda
| 2007-01-09 13:56
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