解放への見通し立たず イランの中村さん誘拐から半年
2008年04月07日10時57分
【テヘラン=吉武祐】イラン南東部バムで昨年10月、旅行中の横浜国立大4年、中村聡志さん(23)が武装した麻薬密輸組織に誘拐されてから、7日で半年になる。イラン治安当局と犯行グループとの解放交渉は続いているが、相互不信もあって解放に向けた見通しは立っていない。
犯行グループは麻薬組織シャフバフシュの一派。中村さんを連れてイラン国境を東へ越え、パキスタンとアフガニスタンの国境地域にいるとみられる。関係者によると、中村さんは時折、携帯電話で日本に連絡しており家族以外と話すこともあるようだ。
治安当局との交渉は、イラン南東部の部族バルーチ族の有力者らが仲介している。アラグチ駐日イラン大使は先月27日、東京都内で「解放へ向けた交渉が活発化してきた」と発言。日本側にも、交渉は少しずつ進んでいるとの感触がある模様だ。
ただ、犯行グループは中村さんの解放と引き換えにリーダーの息子ら収監中の仲間数人の釈放を求めており、これが今回、事件が長期化している背景になっているとの指摘がある。中央政府は最近、麻薬絡みの犯罪に厳しい姿勢で臨んでいるためだ。
治安当局と麻薬組織はこれまで、取り締まりの際の交戦などで双方に多大な犠牲者を出したため相互に不信感があり、中村さん引き渡しの手順を決めるのは容易でないとの見方もある。日本側は交渉を任せているイラン政府に対し、中村さんの安全を最優先にするよう要請している。
イランはアフガニスタンから欧州への麻薬密輸の通り道で、近年は自国での麻薬蔓延(まんえん)に悩む。
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