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分身




しろいじてんしゃにのった
髪のながい巻き毛の女が
うっすらと化粧をした顏を無表情にしながら
道を急いでいるようだった

どこかで見た事がある気がしたが
ゆめのように
あいまいにとうとつで
思い出せなかった

図書館に行って
夢野久作を読みふけったあと
しばらくして
貸出しカウンターに行った

となりで背中を向けた
赤いTシャツを着た男が
おかしい ここにあったよな
と ひとりごとをいった

いったい なにがあったのか気になったのだが
その男がなにかにたえきれず
みぶるいしているようにもみえたのだが
振り返る前に図書館を出てしまった

じてんしゃにのって
家に帰り着く手前で
ベビーカーを押す女に出会った
知人であった

よく見ると
今さっき出会った巻き毛の女に似ていた
しかし 知人の髪は短くかられ 
黒い帽子をかぶっていた

ぐずったのか
幼子をかたわらに抱いていた
えがおであいさつをかわしたあと
なにかにつかれた無表情にかえっていった

もしかして いまさっきの女は 
かのじょの分身であり
わたくしの分身であったかもしれない
などと思いながら しろいじてんしゃをもとの場所に戻した




 
by akikonoda | 2008-07-03 22:27 |
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