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介護老人日誌

   馬頭煙管


風の入る隙間のない
ちいさな六畳一間のアパートで

老人は 
音のしんでしまった

ちいさな馬頭琴のような
煙管に火をつけた

僕はね 美しい馬が
ことのほか好きなのですよ

老人は もうすぐ穴の空きそうな
ラクダシャツを着古しながら言う

馬頭煙管の
くりぬかれた頭の辺りから 

すりつぶされた白骨のような 
煙にとりつかれたような

老人は おりたばかりの生活保護で買ってきたと言う
ティーパックの紅茶に砂糖を三杯入れながら言う 

僕はね
馬の走る姿が何よりも好きなのですよ

何本逝ってしまったか分からない
歯の隙間に甘露色の紅茶を流し込む

ひさしぶりに人にあってしゃべると
なんだか 喉が渇きますね 

そういえば 戦争で大陸に船で渡る時にね
軍馬に水飲み場で水をたらふくあげたのを覚えていますよ

馬は 言葉をしゃべりませんからね 
文句も言えないんですよ 

ただ ただ 水を飲んでいましたよ 
これからどこに行くのかも知らずにね

老人は むち打つように
馬頭煙管を かぽんと打ち据えた

壁に掛けられた繪の中の 
白い馬が二匹

平面硝子に閉じ込められた向こうで 
いなないているような 

いきぐるしくも たちこめる
のろしをあげているような 
by akikonoda | 2008-11-06 14:24
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